ペルセポリスへ

12/16(月)

 2時間の仮眠。バスで一応眠ったからか、疲れは全く残っていない。7:30、町に出るが、とても寒く手袋をつけた。道路は大きく6車線もある。エジプト同様信号が飾りなので(いいすぎ?)、横断するのに2〜3回道路で立ち止まる羽目になる。郵便局で切手を買って、国際電話で一応家族に元気を告げた。(留守電だった・・・)

 そしてイラン航空オフィスへ。
 「リコンファームと国内線の変更をしたいのですが」
 「ええ。でも今システムが落ちているから待って」
 え?!また?
 「い、いつ復旧するんですか?」
 「5分くらいね。」
 ほっとした。またかと思ったが、ちょっと接続できないだけらしい。リコンファームは無事終わったが、国内線は混んでいて、明日早朝しかないということなので、テヘランまで16時間バスに乗るよりは全然ましだと思い、それにした。

 イラン航空オフィスを出て、バスターミナルに向かおうと道路に出ると、5人満員に乗った乗り合いタクシーがぼくの前で停まった。「どこに行くんだ?」とたぶんペルシャ語で聞いている。「ペルセポリス」と答えると、「乗れ」と言う。え?どこに?と思っていたら、助手席のドアを開けられてしまった。前に3人、後ろに3人だ。まさにぎゅうぎゅう詰めだ。バスターミナルに着く頃には、ぼくを入れて3人になっていたが、降りるときいくらか聞くと"no problem. I like ジャポニー"と言う。換算すれば数十円の話かもしれないが、それでもうれしかった。

 シーラーズのバスターミナルに着くと、大型バスやミニバスがいっぱいあるので、「ペルセポリス?」と人づてに小さなバスに乗り込んだ。チケットなどはなく、いくらかわからない。1時間ほどして到着したペルセポリス一歩手前の町マルブダシュトに到着。1,500リアル払って降りた。案の定タクシーが寄ってきたので、「ペルセポリスまで」と言って乗り込む。彼はいろいろ連れていきたい(稼ぎたい)らしく、「ナグジェ・ラシャ」「ナグジェ・ロスタム」という岩に彫られたレリーフに連れていくと言い出す。あまりにしつこいのと、せっかくここまで来たしと思うこともあって連れていってもらうことにした。そしてペルセポリスへ。チケット売場に他の観光客はいないし、広大な駐車場は車が数台しか止まっていない。オフシーズンだとこうも人がこないものかと思ってしまったペルセポリスを独り占めできるわけだ。いずれにしてもラッキーだと思った。

 「ペルシアの都」という意味のペルセポリスは、ペトラパルミラと並んで「中東の3P」と言われるらしい。ダレイオス1世が建築に着手して、息子のクセルクセスが完成させた、ペルシャ時代の拠点だ。中央集権を実践し、後生の政治家たちが手本にしたとも言われる歴史的意義の大きなペルシア。今まではエジプトの側からしか「ペルシア」を見たことがなく、外敵というイメージがあったが、主役を変えて見ると、歴史は無数の魅力を纏って面白い。

  馬から下りずに通れるようにと段差の低い階段を上り、「クセルクセス門」に着くと、なんだかお腹が空いてのども乾いてたまらなくなってきた。それもそのはずだ。イスファハンのチェロウ&ホレシュ以来ほとんどまともにご飯を食べていないんだからなと思い、とにかく売店へ。マドレーヌ、ポテトチップ、ペプシ。おやつのようだが、お腹は膨れた。体力(気力?)復活だ。売店でペルセポリスの地図&ガイドを買って全体を見て歩くことにした。

 まずは目の前にある博物館(ここから出土した物が置いてある)へ行くが、これといった特色はない。しかも小さいので、15分後にはもう博物館を出てしまっていた。再び、入り口の「クセルクセス門」に戻った。買ったガイドブックは日本人(たぶん編纂者の奥さん)も制作に加わっていて、良くできている。これに沿って歩けば、全容がわかるように作られていて助かった。遺跡内は、半袖では少し寒いくらいの気温で太陽も照っていたが、バカみたいにダウンコートを着ていたので、手に持って歩くことになってしまった。遺跡は彫刻の数々が時の繁栄を感じさせるが、「百柱の間」にたどり着き、アレクサンダー大王に攻め滅ぼされた歴史に触れたとき、中東各国の古代史に思いを馳せざるを得なかった。どの国に行ってもアレクサンダー大王の名前が出てくるのだからすごいと思う。若くして死んでいなければ、歴史はどうなっていただろう。ふと素人っぽく妄想できる時間が幸せだった。

 遺跡を出てからしばらく後ろ歩きでペルセポリスを眺めていた。どんどん遠ざかっていく感覚が、かつての栄華と同様だ。「バイバイ」とつぶやいていた。

 さて、再びマルブダシュトに戻りたいが、タクシーが見あたらない。informationで聞くと、来たときと違う場所を指さすので、そちらに行ってみた。ちょうど乗り合いタクシーが出るところだったので、走って呼び止めた。不思議なくらいタイミングがいい。日本ではこんな事ないのに不思議だ。町まで7,500リアル。そこからシーラーズまでミニバスで1,500リアルなので、合わせて150円くらいだ。安い。ただ、ペルセポリスの観光料は博物館の30,000リアルと合わせて60,000リアル(約937円)なので、財布が底をついてしまった。

 シーラーズに着いたのが17:00。そのまま歩いて、ノーフェズ廟へ。イランの大詩人が眠るモスクらしい。結局その手前のモスク(エマーム・ザディエ・アリ・エブネ・ハムゼ聖廟)にたどり着き、そこに入った。夕暮れ時、コーランを聞きながらしばらく黄昏てしまった。帰りはバザールを通って、途中、チェロウとホレシュを食べて、満腹になりながらホテルへと戻った。

6日目へ