. 海外では、バスが出発するとき、乗客の確認をしないから乗り遅れることがある、とよくいわれている。誰もがまさか自分がと思っているでしょう。ところが、私は本当にメキシコでやっちゃいました。はっきり言って、めちゃめちゃビビリます。
. パレンケにいたとき、アクア・アズル(青い水、の意)という滝を見に行く半日の小トリップに参加しました。ツアーに申し込んだとき、私はスペイン語をほとんど話せないので(数字と5W1Hの疑問詞ぐらいしかわからない!)、ツアーの内容について、とにかくアクア・アズルに行って、4時頃に帰って来られるということしかわからなかった。
. 滝に行くまでの間、バスの中で隣に座ったイタリア人の女の人と片言の会話をして、一応顔見知りになったつもりだった。
. バスが滝に着くと、運転手は集合時間は「2:30だ。」と言った、と私は思った。私は、まだまだ時間はあるな、と思って、悠々と滝壺で泳いでいた。そこが、アクア・アズルだと思っていた私は、その滝を見て「そんなに騒ぐほど、水は青く無いじゃないか。やっぱりものは写真の撮りようなんだなと思った。」と内心思ってた。
. 集合時間が近づいて、少し早めに集合場所に行くが、まだだれも来ていない。やっぱり日本人て几帳面なんだなー、などと思いながら悠々と構えていたが、待てど暮らせど誰も来ない。1時間集合時間を「早く」間違えたかなー、と考えて、もうしばらく待つ。「遅く」間違えたとは、決して思わないところが、私の楽天的性格のいいところである。
. しかし、1時間待っても誰も来なかった。ようやく、事態が把握されてきた。試しに、たった一軒のおみやげ屋に「ここは、アクア・アズルか?」と聞いてみた。「ノ(違う)」と返してきた。冷や汗が、タラー、とたれてくる感じがした。さらに余計なことに「アクア・アズルは、あっちだ」と丁寧にもジャングルの彼方を指を指す。
. ♪ジャ、ジャ、ジャ、ジャーン〜♪
. 血の気が引いた。ここは、パレンケという田舎町から、ずっと離れたジャングルの中のミソルハという一観光スポットであるらしい。あるのは、このおみやげ屋だけ。「パレンケに行くバスは通っているか?」と聞いてみる。答えは「ノ」である。どうやって帰ったらいいんだ、と頭がぐらぐらしてくる。タクシーを呼んでみるか、でもここは電話が通じているんだろうか、タクシー代はいったいどれくらいかかるんだろうか、とか色々な考えが瞬時に浮かんでくる。
. ………メキシコ人は、優しかった。困った様子の私を見て、夕方になって、客もいなくなってきていたせいもあってか、その店員は、町まで乗せていってくれると言ってくれた。おおー、メキシコにも神様はいた。メキシコ人は、えらい、しんせつ、やさしい!! メキシコ人万歳。
. 結局、私はその人の車の荷台にのって町まで帰ってきた。本当にありがたいことなのだが、あまりの緊張のせいか、なぜか、今その人の顔が思い出せない。
. とにかく、メキシコの人に救ってもらった私です。ありがとう、メキシコ。
. ………そして、隣に座ったイタリア人、俺のこと忘れたのカー!!!!
. メキシコもアメリカ国境沿いになると、かなりアメリカナイズされてくる。だから、町には食べて踊れるような、レストラン?(限りなくディスコにも近い。)もある。
. 我々メキシコツアー一味は、早速その踊れるレストランに乗り込んだ。初めは、スペアリブのステーキを食い、ソルティードックを飲み、普通に食事をしていたのだが、夜の8時を過ぎ皆の酔いが回ってきたころ、ガンガンのダンスミュージックが流れ出す。
. そのころは、「マカレナ」全盛のころだったから、それが流れると、全員立ち上がって腰をフリフリ踊り出す。外国のノリというのは、ものすごい。もうめちゃくちゃ騒ぎまくる。テーブルの上に上がって踊り出す奴もいる(いっとくけどここは、レストランである)。すげぇーなー、さすがにあそこまでは、と思っていたら、私もテーブルの上に上げられてしまった。私もこうなったら日本男児、腹を切る覚悟で動きまくる。
. ………か、快感!! こ、これがお立ち台というものなのか。私はそこですっかり目覚めてしまった。はじけてしまった私は、今度はオーストラリア人に渡されたテーブルクロスをマントにして、踊り出す(完全にキレてる)。
. メキシコまで来て、テーブルクロスをまといテーブルの上で踊る東洋人(何というアホな光景!)。それがウケたのかどうだか知らないが、私は突然、ブラジル人のおねーちゃんに引っ張って行かれた。そして、
. 「Shall we dance?」と言ったかどうだかわからないが、ブラジル人のすごいきれいなナイスバディーのねーちゃんたちに囲まれて、踊ることになった。ここはまたまた「日本男児」、世界で一花咲かさねばと、「持参」した例のマントを巧みに使い、技巧の全てをこらして踊りまくった(もう少しでドジョウ掬いになるところだった)。
. 日本男児、やりました。ブラジル人大ウケ。引っ張ってきた彼女も喜んでくれて(多分。もしかしたらアホと思ったかも知れない。)ほっぺたに、チューをくれた。いやっほーい!!!!!
. しかし1曲で、全ての技を使い尽くした私は、そこから退散することに。別れ際に彼女は、"Where
are you from?"と言ってきた、
. 答えはもちろん………………………、"Korea!!"(韓国の男性ごめん)
. 事件は、メキシコの片田舎サユリタで起こった。サユリタは、太平洋に面したホントに小さな町(村かも)で、もちろんガイドブックにも載っていない。自然の砂浜の残っているいい田舎町だ。
. 私は、そこでシーカヤックをやっているときに、貝殻で足の親指をズバッと切ってしまった。血がトポトポとしたたりだしたので、焦って宿に帰ると、メキシコ人にして「空手の初段」のおっちゃんが手当をしてくれた。(おっちゃんは、11年前空手の勉強をしながら四谷にすんでたそうである。)
. おっちゃんは、「気合」とプリントされたTシャツの下で、筋肉をプルプルさせながら曰く、「これくらいの傷は、日本人だから、大丈夫だ。」ということであった。おっちゃんは傷の上に力強く包帯をグルッグルッと巻いた。私「…………」。
. しかし、血は夜になっても止まらず、結局町に一軒の医者に行くことになった。メキシコで医療行為を受けることになって不安げな私であったが、でできた医者は、やっぱり作ったようにヨボヨボなじーさん。おかしくて、それだけでけがが治りそうだ。そしてお決まりのように麻酔の針を打ち直すというオチを付けてくれた。だが、じーさんは結構しっかりやってくれた。5針をぬって、確か300円ぐらいだったか。そして、二週間後に抜糸をしろということだった。
. その二週間後、私はサンフランシスコにいた。電話した保険会社の人はいやがっていたが、私は緊急治療室(ドラマで話題のER:Emergency Roomである)に行った。治療費は普通の二倍ほどするらしいのだが、すぐに見てもらえた(普通の治療室だと、長くまたされるらしい)。ハサミで糸をパスッパスッと切るだけのことであるが、これだけで五千円ぐらい保険会社に請求書が行くらしい。だが我々には関係ない。ERはお勧め。
. とにかく、私はメキシコで足を縫い、アメリカで糸を抜くということになった。私は「二つの国を一本の糸で結んだ男だ。」と秘かに自負している。