おばあちゃんの一人旅

11/21(日)

 朝7:30起床。朝食をしているとおばあちゃんが一人話しかけてくる。60前後か。エルサレムの地図をくれたと思ったら(ゴードンINNはテルアビブで、エルサレムとの距離はバスで東に1時間くらい)、「今日はハイファ(テルアビブの北)に行くからご一緒に」と言う。「ぼくはカイザリア(ハイファまでの途中)に行きたいので」と返すと、「ハイファから戻ればいいじゃない」と強引な持論を展開する。「電車でハイファに行って、バスで戻れば安いわよ」という言葉に従ってしまったが、これが勘で適当に言っていることに僕は気付いていなかった。いや、今思えば彼女はひとりでいるのが寂しかったのかもしれない。

 彼女のわがままな買い物に付き合って(旦那に電話したかったらしい。結局留守電だったのだが・・・)、電車が往復で40シェケル(約1,000円)。バスなら1/5で済むところだ。ぼくはこの時点でこの日の予定は彼女に委ねることにした。切符を手にしてしまった以上どうしようもない。旅の最後に、この日にカイザリアに行っていればと悔やむことになるが、この日のおかげで英語の感覚がささやかながら取り戻せたことは感謝すべき事かもしれない。

 一日の間で、何度も聞き返す僕に、彼女はわからない言葉をわかる言葉に置き換えて話してくれた。こんなに親切な人はそんなにいない。 特級のようで、ハイファまですばらしい景色を抜けてハイファに着いた。時間にして30分くらいだ。バスよりは断然速い。

 ハイファは地中海を玄関にして、小高い丘になっている町である。丘の上には「バハイ神殿」がある。大金持ちの宮殿のようだ。坂に沿って門から宮殿まで続く道がはっきり見えるので、必要以上に見栄えがいい。気に入った。 まずはこの宮殿までたどり着いて、さらにある場所を目指していた。「科学博物館」である。なぜこのおばあちゃんは科学博物館に行きたかったのだろう。僕としては「イスラエルまで来てなぜ?」である。もっと観たいところがあるのにさ。「まあ、初日だし」という気持ちも強く、散歩かたがた道を探しながら舗装された坂道をあちこちと歩き続けた。たどり着いた科学博物館は発明品の寄せ集めで、どちらかというと小学校の理科を学ぶ感覚で面白かった。しかし、やはりイスラエルは感じることができなかった。そして、バハイ寺院をもう少しぼーっと眺めていたかった。

帰りは「ファラフェル」を食べて電車で一気にテルアビブへ。宿の前で「明日の朝は8時にドアをノックしてね」と言ってくる。「もうひとりにしてよぉ」と思ったが、にこにこして”SEE YOU”。いい人なんだけど、ぼくはただ一人になりたかった。

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