溶け込めない初日

12/13(金)

 テヘランは思いの外寒く、厚着をしてきて正解だった。空港の中でまずは換金。100ドル分をリアル(イラン通貨)に交換した。1ドル=7,997リアル(1円=64リアル)。80枚ほどの紙幣を手にしてかなり嵩む。国際空港を出て、5分先の国内線空港までタクシーに乗り込む。国内線のターミナルはいくつかあり、どこで何をすればいいのかわからない。とりあえず近くにあるターミナル(後でわかったが、到着ゲートだった)に入ってinformationへ。曰く、4:30から第4ターミナルでチェックイン開始とのこと。第4ターミナルの空港のベンチで2時間ほど仮眠する。チェックインを終えて搭乗口に行くと、朝6時という早さを感じないほど混雑している。イスファハン行きの飛行機は満席だ。

 イスファハンの空港を降りると、いや降りる前に、"taxi?"といきなり声を掛けられてしまった。くっそ〜せっかくの余韻を、と思いながらいつものパターンになってしまうのが面白い。まあどうせ乗るつもりだったので、「とりあえずエマーム・ホセイン広場まで」と彼に伝えた。タクシーの中では、英語も話せないくせに(他人のことは言えないが)、何度も話しかけてくる。しかもすべて"what is?"で始まるからいよいよ意味が分からない。「どこに行くんだ?」「何日いるんだ?」と聞きたいらしいが、すべて"what is?"だ。いきなり疲れてしまった。

 広場で降りて、8時すぎに大通りを歩くがどこも空いていない。もっと賑やかなイメージがあったのに・・・。とりあえずホテルを探す。ダブルで57,000リアル(約900円)。部屋もきれいだし、暖房も付いていたので、ここに決めた。宿のおじさんは全く英語が通じずペルシャ語をしゃべってはニコっとするので、ぼくもニコっとしてみた。しばらくすると軍人っぽい若者が通訳としてやってきたので、バムに行きたい(2日後の予定)ことを告げて、いろいろ話した。そのうちに、明日の夜行バスに空席があることを電話で確認して予約をしてくれた。

 ホテルを出たのがちょうど9:00。まだまだ一日が始まったばかりだ。とりあえず歩いてみようと町中へ繰り出す。店は90%以上閉まっている。何もない大通りをただただ歩くと、internetと書かれた宿を発見!hotmailに登録してある友人にhelloメールを送ってみた。(恥ずかしくなるような中学英語で・・・)その店で、日本人のバックパッカーに出会った。大学生だと言っていた。アフガニスタンを通って来たと聞いてかなりびっくりしたが、周辺の情勢が思ったほど悪くないと知って少し安心した。

 宿を出て、マスジェデ・ジャーメ(左写真は外観)を目指してひたすら歩くことにした。途中からバザールに入って、アーケードの下を歩くことにした。休日(金)とはいえ、それなりに店は開いている。おなかがすいたので、やっと見つけた食堂で朝食。いつものマトン味とヨーグルトだ。「・・・ん?まずっ!」とてつもなく酸っぱいヨーグルトだった!息を止めて飲むが、酸っぱくて舌がしびれる。まずすぎ。こういうものだと知らなければ、腐っていると思ってしまうだろう。

 20分ほどして到着したマスジェデ・ジャーメ(右写真は内観)はとてもきれいだった。天井を見上げると、水色を基調とした装飾が印象的だ。そして空が青く、風が冷たい・・・風邪気味の体が震えて急にだるくなってきた・・・まずい・・・。ホテルに戻る途中、フラフラになりながらエマーム広場へ、明日の下見にやってきた。「イスファハンは世界の半分」と讃えられる場所だ。数百人の人たちが同じ方向を向いて、同じ体勢で礼拝している。ぼーっと見ている自分自身に気づいたとき、まさに宗教観の違いを感じてしまった。

 軽い頭痛を感じながら、朦朧とする意識の中、ホテルへ向かった。休日とはいえ、イスファハンってこんなもの?つまらなすぎる。バザールもありふれてるし、町並みも至って普通だ。今回イランに来た目的は特になかった。
「何かあると思って」
聞かれれば周りにはそう答えて、ここに来た。ピラミッド、アンコール・ワット、エルサレムの旧市街、エル・ハズネを目にしたときのような衝動は端から期待していない。それにしても・・・と思いながら歩いているとホテルにたどり着いてしまった。まだ14:00すぎだ。歯磨きだけして、暖かい部屋でそのまま眠りについた。長い一日はまだ終わっていない。

 ふと目が覚めると、18:00。結構回復したなぁと思って、スィ・オ・セ橋へと向かった。辺りは真っ暗で、人通りは多い。エジプト同様、信号無視(走っている車の間をすり抜けるゲームのよう)が常識。夜のスィ・オ・セ橋はとてもきれいだ。橋の下には、チャーイ・ハーネ(水タバコとチャイを楽しめる)がある。300メートルの橋を向こう岸に渡って、チャーイ・ハーネに入った。店というより、まさに橋の下だ。一人で座っていると、「友達を紹介するよ」と若者が寄ってきた。ノコノコついていくと、8人くらいの男たちが楽しそうに迎えてくれる。しかし、寄ってきた若者しか英語が話せないから大変だ。お互い簡単な言葉で会話を交わして、なんとなく不思議で暖かい雰囲気を過ごすことができた。「吸え吸え」と勧められた水タバコはあいかわらず甘くておいしい。最近ようやく水タバコの「よさ」みたいなものがわかってきた気がする。チャイもすすめられて3杯も飲んでしまった。そのうちに店員が「こっちに来い」とぼくを別の小部屋に連れ込んだ。タダ飲みしたから怒ってるのかな・・・そこには他の男たちがいて、結構上手な英語で話しかけてきた。またまた水タバコをすすめられて、しばらくするとぼく用のチャイが運ばれてきた。一人のビジネスマンっぽい男が、携帯を出して、着メロ(ありふれたデフォルトの曲だが)を聞かせてくれる。sony-ericssonブランドで、ソニーをはじめ、日本企業をほめまくっていた。しばらく話して一人先に店を出た。これで1,000リアル(16円)だから安すぎる。

 橋を渡って帰り道。サンドイッチとペプシ(5,500リアル=86円)を晩ご飯にして、宿に戻った。シャワーを浴びてようやく落ち着くことができた。

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