イランに着くまで

12/12(木)

 「なんでイランなの?」何度かそう聞かれてぼくは笑ってごまかしていた。なんでだろう?何があるか知ることが目的。そんな気がして選んだ国だった。

 前日までの日常も今いる現実も何となく実感が湧かない。成田空港まで父に送ってもらうが、車の中でもただなんとなく頭がぼーっとしていた。成田に着くと、仕事で成田に来ていたM先輩とばったり会った。成田にいることは知っていたが、この偶然がぼくの旅行を一層期待させる。

 飛行機はガラガラで、窓際のぼくの席の隣は反対側の窓際の席というほどだ。シートは「24K」。席に着いたとたん、ここ数ヶ月の活気ある現実がすごく遠い過去に閉じこめられてしまった。ゆっくりと流れる時間の音を感じずにはいられなかった。ここからいつもの旅が始まるのだろう。
 15:50発。15分程度の遅れで飛行機は離陸した。木金が休日にあたるイランにとって、この便は違和感のないものなのだろうか。

 北京でのトランジット。わずかに乗っていた日本人(中国人?)はみんな降りてしまった。機内を見渡すと、イラン人が20人ほどいるだけだ。飛行機の中では、イランをどうまわろうかと考えて、おおよそ行きたい街は挙げていたのだが、国の広さにあきらめる場所もいくつかあった。ここでヤズドという街に行くことも断念することになったが、手際の悪いことにヤズド−テヘランの航空券を予約してしまっている。まずこの便を変更することがイランに着いてやらなければならないことになってしまった。この適当さも心地よい。(イラン航空を利用すると、イラン国内線が無料で2本付いてくる(おまけ航空と言うらしい)ので、一応押さえておいた)

 テヘランには23:55着予定で、翌朝6:00発イスファハン行きの国内線に乗る予定だ。この「空き時間」を使って、国内線のチェックインのみならず、先ほどの国内線の変更や、帰りの便のリコンファームをやれればラッキーだ。しかし、「地球の歩き方」には空港案内も載っていないし・・・と思いながら、飛行機での14時間をただただまったりと過ごしていた。

 北京を離陸する頃、機内が中国人で埋め尽くされていたのは少し意外だった。飛行機に乗っている間は、暇だなぁと思って大した感情がなかった。むしろ落ち着いている大人な自分がつまらなくてちょっとショックを受けていた。

 少し遅れて0:30にテヘラン空港に到着。入国審査を待ちながら、胸の奥に閉じこめられていた「何か」が沸き上がってくる。この感情がたまらなく好きだ。なんだかワクワクする。イラン航空は意外なほどに近代的だった。しかも、深夜だというのに出口は迎えに来ている人の多いこと多いこと。想像以上に賑やかな雰囲気だった。短く長い旅の始まりだ。

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